どの言語にもある共通の概念を処理する場所が脳にあった!

脳 科学技術
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ニューヨーク大学の研究チームの論文によると、聞く・話す・読む・書く時に、脳の中でどの言語でも共通して行う概念処理があり、その場所を特定したそうです。左前側頭葉(left anterior temporal lobe / LATL)という場所がどうやら概念を考えているところのようです。

バイリンガルの脳を調べて分かった概念を処理する場所

今回の論文の中で研究者たちは、脳磁計と呼ばれる、脳から出てくる磁気を測定する測定器を使って、バイリンガルが脳の中でどのような活動をやっているのか測定しながら、バイリンガルに短文の正誤問題に取り組んでもらいました。

この問題文は主語と動詞だけでできたごく簡単な短文で、意味が通るものと意味が通らないものの2種類を用意します。これにさらにバイリンガルとして自由に操れる言語2種類を組み合わせて、以下の4パターンを用意します。

  • 1種類の言語だけで意味が通る問題文(例えば、アイスクリームが溶ける)
  • 2種類の言語を混ぜて意味が通る問題文(例えば、ice cream が溶ける)
  • 1種類の言語だけだが意味が通らない問題文(例えば、ジャンプが溶ける)
  • 2種類の言語で意味が通らない問題文(例えば、jump が溶ける)

これらの4パターンの問題文をランダムに出した後に、その問題文にマッチする画像を見せます。マッチするといっても、意味が通る問題文の場合は完全にマッチしますが、意味が通らない問題文の場合は主語か動詞だけがマッチするものになります。

これらの出題をしている最中に、 脳磁計で脳のどの部位の活動が活発になっているか見ながら正答率と応答速度を測ります。

その結果、聞く話す読む書く時に関係する脳の部位はいくつかありますが、そのうち左前側頭葉だけは2種類の言語が混じっていても、活動量と応答速度がともに変わりませんでした。言葉を理解したり発したりする場合に、文法やら構文やら意味やらが関わってきます。それらがそれぞれの言語の特徴だったりするので、主語が英語で動詞が日本語というように言語がごちゃ混ぜになった文を見せられると、おやっと思って混乱したりするのが普通です。しかし、この 左前側頭葉は何食わぬ顔をして自分の仕事をするようです。そのため、どの言語にも共通にある概念的なものを取り扱う部位なのではないかということになるわけです。

言語も文字体系もごちゃ混ぜだと脳はストレスに感じる

この研究ではもう1つ面白い実験をしています。実際の実験は英語と韓国語の両方を自由に操れるバイリンガルを集めて実施しています。ご存じのように、英語はアルファベット、韓国語はハングルで表記します。しかしハングルは発音をアルファベット表記できるので、ハングル表記の単語と同じ意味の単語をアルファベット表記したものの2種類を用意できます。この方法で上記の実験に文字体系の違いも混ぜて実施しています。

そうするとどうでしょう。主語と動詞の組み合わせが英単語 + アルファベット表記の韓国語単語であれば、たとえ2種類の言語が混じっていようとも、意味が通る通らないにかかわらず、左前側頭葉の活動量が変わりませんでした。それが、 主語と動詞の組み合わせが 英単語+ハングル表記の韓国語単語の場合は、高い活動量を示したのです。さすがの左前側頭葉もストレスに感じたのでしょう。

左前側頭葉という1部位ではなく脳全体のパフォーマンスを比較すると、意味が通る通らないでいうと、意味が通る問題文の方が、たとえ言語がごちゃ混ぜだろうと、文字表記がごちゃ混ぜだろうと、正答率と応答速度に差は出ませんでした。さすがバイリンガルです。一方、意味が通らない問題文の場合、 意味が通る問題文の場合に比べて、全体的に正答率と応答速度が見劣りしました。これは何となく分かる気がします。しかしそれに加えてなんと、文字表記がごちゃ混ぜだと、文字表記が揃っている場合に比べて正答率がさらに悪かったのです。

マルチリンガルを目指す場合、文字体系に注意

ということは、バイリンガルやマルチリンガルを目指す場合、文字体系の選択には注意が必要ということを意味しているのではないでしょうか?たとえば、日英対訳本を使って学ぶときには、それぞれ漢字とアルファベットで文字体系が違いますので、極力誤訳が少ないものを選ぶ必要があります。そうしないと脳ミソに無用なストレスを加わえることになります。かたや日中対訳本の場合は、それほど誤訳を気にしなくてもいいのかもしれません。同じく英語と他のヨーロッパ語との対訳本も安全な部類です。

確かに、Duoligoを使って英語で中国語を勉強していた時に、「この訳でも間違っていないのに」と思ってレポートすることが何度かありました。ストレスがかかって頭に来たのでしょう。一方英語でブラジルポルトガル語を学んでいた時期や、今、英語でスペイン語を学んでいますが、そういうストレスを感じることは少ないような気がします。その場合もサービス向上の一助と思って一応レポートします。この場合は気持ちよくやっているということでしょう。

取っつきやすい言語と取っつきにくい言語』で説明した親しみやすい言語の特徴に文字体系を追加すべきようです。

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