お奨めの魚はサバ

シメサバ 習慣

魚が健康にいいのはよく知られています。ボケ防止に効果があるDHAをたくさん含んでいます。しかし一方で、海洋汚染が生物蓄積している懸念もあります。財布の中身とも相談が必要でしょう。今挙げた3つのポイントをすべて優秀な成績でクリアできる魚があるのでしょうか?あります。サバです。

DHAが体にいい

思っていた通り、魚は脳の健康によい」魚には豊富にビタミンDが含まれるため、認知症防止に効果的だという話をしました。魚に豊富に含まれるものにもう一つDHA(ドコサヘキサエン酸)があります。こちらも体によいことはよく知られています。脳神経、網膜、心筋、精子の細胞の細胞膜に特に多く存在します。

どうしてDHAが必要なのかまだ詳しくは分かっていないようですが、「柔軟性仮説」というものがあります。細胞膜がダイナミックに変形する際に、柳腰で追従しながら構造を保つのに都合がよい仕組みを持っているそうです(論文1)。

それが脳にとっては重要です。脳の中では神経細胞同士が無数につながっています。そして、絶えず外からの刺激に応じて柔軟につなぎ変えていく必要があります。DHAがあることで配線変更が容易になるのです。特に海馬にDHAが多く存在することからも、記憶にとって重要な役割をしていることが分かります。脳萎縮を防ぎ、血管の健康を保つことで認知症予防に効果があるというのもうなずけます(論文2)。

そんなDHAですが、魚に多く含まれていることは、「おさかな天国」という曲を聴くまでもなくご存じでしょう。特に青魚に多く含まれるという話もよく聞きます。実際どうなのか文部科学省が運営する食品成分データベースで調べると、簡単に出てきて、1位:マグロ、僅差で2位:サバ、大分落ちて3位以下が団子レースでブリ、ウナギ、サンマ、イワシと続きます。下馬評通り、やはり青魚が強く、例外がマグロとウナギです。

でも海洋汚染の影響が心配

「DHAが体に不可欠なのは分かった。でも海洋汚染の影響が心配」という声ももっともです。海洋汚染物質は大抵脂肪と一緒に魚の体内に蓄積されて生物蓄積と呼ばれたりします。蓄積には時間がかかるので、寿命が長い魚はリスクが高いという相関関係があるでしょう。

では、魚の寿命はというと、青魚は総じて短命で、大型魚のマグロは長寿です。また、大型ではありませんが、長寿で有名なウナギも寿命が長い魚です。

そこでここでは、独自に「10年/魚の平均寿命」を生物蓄積安全度とすることにします。平均寿命が生物蓄積リスクと正の相関関係があるので、その逆数は安全度の指標にできます。

もちろん短命な魚ほど安全ということになりますので、青魚が金銀銅を独占して、1位:サンマ、続いてイワシとサバが2位で並び、4位も青魚のブリになります。

財布の中身とも相談が必要

DHA、食の安全ときて、そうは言っても財布の中身とも相談が必要でしょう。高級魚を頻繁に食卓に並べるわけにもいきません。しかし、青魚はここでも優等生です。東京都中央卸売市場月報で毎月の卸値が公開されています。2022年の卸値平均値を採用します。

卸値ランキングは、1位がウナギ、2位がマグロ、3位以下は青魚です。卸値と寿命とは正の相関関係があります。ただし例外もあって、それはサンマです。最近漁獲量がめっきり減ってしまったことが原因だと思われます。

北京によく出張していた時分、夜は日式居酒屋で過ごすことも多かったです。日本人だけでなく、地元の人もたくさん来ていて、その時、サンマの塩焼きも定番メニューにありました。中国人の舌も美味しいと感じるようです。それもあってかどうかは分かりませんが、サンマが捕れなくなって、サンマの街だった釧路が、今や水揚げ量の大半がイワシだとタクシーの運転手さんが嘆いていました。

値段も安い方が好ましいので、ここでは逆数を取って、1万円で食べられる量で比較することにします。

私が選ぶNo.1 の魚

DHA、食の安全、価格と見てきました。これら3つのポイントで総合評価したグラフが以下です。

DHA、食の安全、入手性で見る魚種の違い

DHAの量でマグロに次ぐ2位、生物蓄積安全度でもイワシと同率2位、そして大衆魚としてお求めやすさでもイワシに次ぐ2位というすばらしい成績のサバが一番のお奨めとなります。

これもイワシとキャラが被りますが、年中食べられるという点でも優れています。マサバの旬は脂が乗る秋〜冬ですが、ゴマサバは季節によらず脂がそこそこあり年中楽しめます。

シメサバで生食が一番良い

塩サバを焼き魚にしたり、サバの味噌煮でいただくのもおいしいですが、DHAを効率よく摂取するにはやはり生食です。しかし、サバは足が速い魚です。刺身で食べる機会は少ないでしょう。しかし、生食できないかというとそうではありません。

そうです、シメサバです。シメサバなら簡単に食べられます。魚コーナーにシメサバを置いていないスーパーマーケットは見たことがありません。常備商品の一つです。お店で買うシメサバで一つ不満があるとすると、成分表を確かめると必ず砂糖が入っていることです。甘くしなくてもおいしいと思うのですが、よく言われるように、油と砂糖の組み合わせで脳をバグらせて、また食べたくするためなのでしょう。

本当は自分で作るのがいいのでしょうが、魚の調理は結構面倒なので、今のところは考えていません。

[参考文献]

  1. DHA の構造的意味, 吉田 敏, J. Lipid Nutr. Vol.26, No.1, 2017
  2. Red blood cell ω-3 fatty acid levels and markers of accelerated brain aging, Neurology, February 28, 2012; 78 (9)

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