「1食で完全栄養食」を解剖

腸内フローラ 習慣

出来合いの加工食品でなくても、スーパーマーケットで普通に購入できる食材を使って、1食で完全栄養食を達成することができます。では、どのようなことを考慮して食材を組み合わせればよいでしょうか。私はこう考えたというところを見ていきたいと思います。

先ず動物性タンパク質を摂ることを考える

栄養素の1日の摂取基準量と「1食で完全栄養食」の関係

ヒトの体の 18% はタンパク質です。これがないと筋肉・神経・血管はおろかホルモンや酵素などを作ることはできないわけです。質・量とも最重要です。体重を kg で示した数値を g で換算すると、その人が1日に必要な量と言われています。体重が 60 kg の人なら、60 g が必要というわけです。

タンパク質にも動物性と植物性があります。次はどちらを優先するかです。その決め手になるのが、アミノ酸スコアと呼ばれるものです。必須アミノ酸というものが 9 種類あります。これらは体内で合成できないので、どうしても食べて摂取しないといけないアミノ酸です。イソロイシン、ロイシン、メチオニン、トリプトファン、リジン、バリン、ヒスチジン、トレオニン、フェニルアラニンの 9 種類が必須アミノ酸になります。

これらの必須アミノ酸を都合よく全て必要量摂れる食材を選ぶのが、一番効率がよい食べ方なわけです。それがアミノ酸スコアで見て取れます。単純に言えば、アミノ酸スコアが 100 の食材を選べば、無駄にたくさん量を食べる必要がなくなります。その分を他の必要な栄養素摂取に回せます。

アミノ酸スコアが 100 の食材は、肉、魚、卵、乳製品、それに植物性タンパク質では例外的に納豆、豆乳やきな粉などの大豆食品です。それらから好みに合わせて選べばよいでしょう。大豆がアミノ酸スコア 100 なので、精進料理だけでもお坊さんが長生きしていることに合点がいくのではないでしょうか。植物性タンパク質でも大豆は例外中の例外なので、基本は動物性タンパク質を最優先にするのがよいと思います。

この中で、私は肉以外の魚、卵、乳製品、大豆で 1 日に必要な量を摂っています。

次に脂肪の質にこだわる

私が「1食で完全栄養食」の中で肉を外す理由は脂肪です。肉の脂肪は大半が飽和脂肪酸です。必須脂肪酸は飽和脂肪酸、オメガ3脂肪酸(表中では「n-3系 多価不飽和脂肪酸」)、それにオメガ6脂肪酸(表中では「n-6系 多価不飽和脂肪酸」)の3種類です。「実践!1食で完全栄養食」の回で示した表:1 食豪華主義の朝食を見ての通り、このうち飽和脂肪酸は、肉を摂取しなくても脂肪を含む食材には大なり小なり含まれるため、ある程度の量を食べると自然と1日の摂取基準量をクリアできるからです。

対して、不飽和脂肪酸、特にオメガ3脂肪酸を摂ることが、認知症予防に効果があるということが 33 の研究論文をレビューした結果で示されているためです(論文1)。また、ビタミン D も豊富で脳を健康に保つ働きをします。そういう理由から、魚のアラを圧力鍋で骨まで食べられるようにしていただいています。

ただし、大型で寿命が長い魚は重金属などの有害物質を体脂肪に生物蓄積している可能性があるので、避ける方が無難です。ということで、小型で寿命も短く、オメガ3脂肪酸に属する DHA や EPA が豊富な青魚を選択するのがよいことになります。

私の場合、糖質制限しているので、魚から摂れる脂肪だけではエネルギー量として足りないので、アマニ油や MCT オイルを加えています。実は MCT オイルもボケ防止には効果的なのです。

不飽和脂肪酸のうちオメガ6脂肪酸も飽和脂肪酸と同様に、野菜類をある程度食べると、気をつけなくても知らず知らずのうちに1日の摂取基準量を摂ることができます。むしろ摂り過ぎに注意しなくてはならないものの一つです。耐容上限量は定められていないのですが、体に慢性炎症を引き起こす原因になりますので、摂り過ぎは禁物です。私の場合は、意識的に揚げたり焼いたりしたものを避ける意味で、野菜は生でそのままかレンチンして温野菜にして食べています。

食物繊維が3番目

3番目に重視しているのが食物繊維です。食物繊維は意図して摂ろうと努力しないと、1日の摂取基準量を達成するのは難しいです。タンパク質と脂肪のどちらか一方が豊富でしかも食物繊維、とりわけ水溶性食物繊維が豊富な食材というのはなかなか見当たりません。

唯一の例外がアボカドでしょう。タンパク質こそ少ないですが、オレイン酸を始めとする不飽和脂肪酸を豊富に含みます。オメガ3脂肪酸は少ないが、オメガ1脂肪酸に属するオレイン酸が豊富です。オメガ1脂肪酸は必須脂肪酸ではないので、表には載せませんでしたが、オリーブオイルに豊富に含まれていて、コレステロールを下げるなどの健康効果が高いことで有名です。食物繊維の中でも水溶性食物繊維をたくさん含んでいます。

水溶性食物繊維の中でも腸内細菌のエサになるものを優先したいところです。そして、腸内細菌の中でも大人の味方は、最近注目が集まってきている酪酸菌です。酪酸菌がエサにするのが、ゴボウやタマネギに多く含まれるイヌリンとイネ科植物に多く含まれるアラビノキシランです。酪酸菌自体を摂取する手段は限られます。目ぼしい食材はぬか漬けぐらいしかありません。ですので、私はぬか漬けのきゅうりも食べますが、それに加えて、エサとなるイヌリンをゴボウとタマネギからたくさん摂るように心がけています。アラビノキシランの方は、糖質制限との兼ね合いでイネ科の植物は少なめにしている関係上、効率よく摂取するために、豆乳オートミールを食べるようにしています。

仕上げのビタミンとミネラルは野菜とナッツのタッグで

ビタミンは結構、小松菜、ホウレンソウ、大葉といったマルチビタミン剤のような野菜だけでも何とか1日の摂取基準量を達成できます。例外はビタミンB12です。ミネラルもちょっと足りません。

ビタミンB12は主に肉・魚・卵などの動物から摂るのが一般的です。しかしそれらだけから摂ると、同時にタンパク質も十分なほど摂ってしまいます。あまりタンパク質を摂ると、その段階で満腹中枢は「打ち方止め!」と食べるのを止めてしまいます。そうすると、他の栄養素を摂らないで終わることになりかねません。

ビタミンB12を摂取することを目的にして別の食材を加えることで、肉・魚・卵の量をほどほどに抑えることができます。それが海苔です。手巻き寿司に使う焼き海苔1枚だけでも結構な量が含まれています。食べる量を抑えて必要量のビタミンB12を摂取することができます。他の海藻ではそうはいきません。他にも海苔は日本人しか持たない善玉腸内細菌のエサになる水溶性食物繊維を多く含みます。

ミネラルは海苔を含む海藻類そしてナッツ・シードから少ない量で効率的に摂ります。ナッツはアーモンド、クルミ、マカダミアナッツ、カシューナッツの4種類のミックスナッツがお奨めです。それぞれ得意があるからです。アーモンドはミネラルはそこそこですが、ビタミンEを豊富に含みます。クルミもミネラルはそこそこですが、オメガ3脂肪酸を多く含みます。マカダミアナッツとカシューナッツは微量ミネラルに強く、セレン、クロム、モリブデン辺りをカバーします。

シードは一番手に入りやすく、栄養価も高いカボチャの種が一押しです。カボチャの種は微量ミネラルだけでなく、メジャーな鉄・亜鉛・銅・マンガンも豊富に含んでいてミネラル栄養価が高いのが売りです。上で挙げたナッツの代わりにカボチャの種の量を増やしてもいいかもしれません。

おっと、糖質を忘れていました

危うく糖質に触れじまいになるところでした。赤血球と精子はブドウ糖がないと動きません。脳はそこそこケトン体を使えます。極端なことを言うと、必須アミノ酸と必須脂肪酸を摂取できていれば、後は糖新生という生合成の仕組みでブドウ糖を作り出せるのです。太古の時代から飢餓に悩ませられ続けた進化の過程で、ヒトの体には糖新生というバックアップ回路が備わっているのです。

とは言え、常時バックアップ回路を作動させるのもいかがなものかということもあり、なかなか糖質はゼロにはできません。しかし塩分と同じで低位安定させた方がよい栄養素であることは確かです。『糖質制限の真実』(山田 悟 著)では、1日 70 ~ 130 g でコントロールする「ロカボ」を提唱しています。と言うことで、70 g を超えた辺りをターゲットにするのがよさそうです。軽くお茶碗1杯程度です。

私の場合、昼食を外食で済ませている関係上、昼食でお茶碗1杯程度ご飯を食べることを考えて、朝食は申し訳程度にしかオートミールやご飯を食べないようにしています。これで何か支障をきたしたことはありません。正月にお雑煮の餅を食べましたが、却って首筋が少ジンジン来ました。

糖質はどうしてもエネルギーとして使う際に酸化が発生するので、炎症を引き起こしやすいからだろうと思います。

ということで、一般的な書式にならい、栄養素表で一番上に糖質を置きましたが、実のところは優先順位の最下位が糖質なのです。しかしここでもう一度触れますが、忘れてならないのが炭水化物の中でも糖質は二の次、三の次でいいのですが、食物繊維は非常に大切だということです。共生関係にある腸内細菌にエサを与えることは、ペットにエサを与えるのと同じ程度で大事なことなのです。

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